化粧

まだ 湿ってたバスタオルは 床に落ちたまま
乾かずに 冷たいまま
ここで 二人が着ていた 寝巻きも 洗えずに
くしゃくしゃに 残ったまま

口紅で書いた 赤い糸じゃ
あなたのこと 縛れなくて
あの子のこと まだ好きだってわかっているから
ほら 早く愛してあげなよ

「今日は本当にありがとう
でももう行かなきゃ。」
知らない車 指差して
「迎えに来てくれたの」なんて笑ったまま
人混みに逃げ込んだの

曲がり角で 泣き崩れて
悲しみだけ 街に溶けた
過ちと分かるのに過ちを繰り返すだけの
ほら 早く迎えに来てよ

飲めないお酒を飲んだのも
疲れていないフリしたのも
一秒でも 隣にいたいだけだったの
いつも優しく答えてくれたあなたなのに
諦め方は 教えてくれないのね

今ならまだ やめられると
思うときには もう遅くて
抱き締められたら 嘘でも暖かかったよ
今までありがとね

触れた唇 残した赤は
あの子に会う前に落として
口紅が薄れた その瞬間にわかってたのは
もっと素直になれたら よかったよ

素顔になれたら よかったよ
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