泣いちゃえ渡り鳥

逃げて追いかけ 女の旅は
苦労くの字の 渡り鳥
花の季節に 背を向けながら
薄情鴉(はくじょうがらす)を 追いかける
峠の日暮れは からっ風
「泣いちゃおうかな」

笠が重たい 小袖もほつれ
口に熊笹(くまざさ) 上州路
一宿一飯 一本刀
明日(あした)の旅籠(はたご)は どこへやら
素足のあかぎれ 痛いのよ
「泣いちゃおうかな」

花のしずくに 追われて濡れて
猿も渡れぬ 猿ヶ京
詫びても詫びれぬ 不孝の数を
叱っているよな お月さん
ほんとは母さん 恋しいよ
「泣いちゃおうかな」
×