桜前線

「今年さいごの 桜じゃろうか」
「何を云うのよ お父さん」
浮かれ花見の 川堤(かわづつみ)
先の父娘の 言葉が沁みる
桜に人あり 涙あり
偲ぶあの人 桜前線

人の別れが 多くもなった
変わる浮世の 日暮れ坂
添えぬじまいの あの人に
せめていっぱい 桜(はな)いっぱいに
あの空埋めて しまうほど
咲けよ匂えよ 桜前線

父が耕し 守った土に
母のいく汗 いく涙
そっと私も 触れたくて
帰りたくなる 今日この頃よ
桜に幸あれ 命あれ
春は又くる 桜前線
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