水無月の声

地底湖を回遊する 僕らは魚のように
目を閉じることなど 知らないまま一日中
群青色の 夢を見ていた

大きな手で地上へと むりやり放り出され
密度の濃い風に 鱗を剥がれた僕らは
泳ぐことさえ 忘れてゆく

夜空から 降りて来る 小さな声を 確かに聞いたんだ今
汚れた 鼓膜を 破った 懐かしい鼓動 

そして降り続く 降り続く 降り続く 水無月の優しい雨は
羊水 みたいに 僕らを 再び包んだ

密かな夜更けを 泳いでみようよ 光を知らない 少年になって

水の無い空の下 僕らは弱さに溺れる
自由だった手足を 忘れてしまわぬように
身体中で 雨を受けた

大地へと 沁みてゆく 小さな声に 僕らは耳を澄まして
歓びを 産み出す 陣痛に 黙々と耐える

だから降り続け 降り続け 降り続け 水無月の母なる雨よ
脊髄を 伝って 心へ すぐに注ぎ込め

溢れてしまった 温もりを少し 土へ帰そう 涙にして

降り続く 降り続く 降り続く 水無月の優しい雨は
羊水 みたいに 僕らを 再び包む

だから降り続け 降り続け 降り続け 水無月の母なる雨よ
脊髄を 伝って 心へ すぐに注ぎ込め

密かな夜更けを 泳いでみようよ 光を知らない 少年になって
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