春、恋桜。

春の夜風に当てられて
今宵も想うあなたの事を
ただの遊びと知りつつも
触れた手と手は熱かった
声に出しては言わないし
まして恋だの認めた日にゃさ
あなた離れてしまうでしょ
ならば密かに焦がれましょ

片目瞑って 遠いあなたを
ゆっくりゆっくりなぞります
耳から口へ、口から肩へ
どんどんどんどん滑ってく

こんな冷たくて世知辛い世界で
ただ一人の愛する人よ
どんなものよりも代え難い
いつかの窓辺に差す光の様に

呑めや唄えや舞桜
頬の火照りは酒かそれとも
百も承知の結末よ
けれど、こちとら不慣れなもので
ただの遊びじゃございません
あなた、夢にも出てくる始末
食指、あなたに見立てては
這わせ、絡ませ、口付けて

あなたの声もあなたの腕も
いつしか誰かのものになる
隠す手の平、柔く剥がして
その目は確と焼き付ける

思わせぶってえげつない
お陰で一喜一憂、早死にしそうよ
盗られるなんて耐え難い
これ以上、苦しいのは嫌なのよ

いっそ騙して、それでもいいわ
明日になれば、忘れてあげる
あなたの声も、あなたの腕も
一度だけでいい、思い知りたい

こんな冷たくて世知辛い世界で
たった一人の愛する人よ
どうか、今だけはお側に
終わりも無ければ、始まりも無いまま

こんな冷たくて世知辛い世界で
ただ一人の愛する人よ
どんなものよりも代え難い
いつかの雨上がりの匂いの様に

ほら、花は舞い散る
ねえ、一口いかが?
はあ、人はこれをや
ああ、恋といふらむ
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