やぐるま岬

寒いのは咽び泣く 霧笛のせいじゃないさ
宛もなく下りてみた 黙りこくった岬町
こんな酒場の片隅に 面影一輪 矢車草
どこを流れて いるものか
矢車 矢車 紫の
花の翳(かげ)りに 切なく浮かぶ女(やつ)

逢いたさに勝てるほど 人など強くないさ
ままならぬ恋を捨て 知らぬ他国で飲む夜は
息をかけたら散りそうな 儚さ一輪 矢車草
晩春(はる)がここまで 運ぶのか
矢車 矢車 くるくると
酔えば傷みが 過去(きのう)をしめつける

旅を行く身は同じだが 最果て一輪 矢車草
誰か運命(さだめ)に 出遭えたか
矢車 矢車 あれ以上
暗くするなよ この世の身の上を
×