『死ぬより辛ひことつて何?』
僕にはまるで判らなくて
「僕は死ぬより怖いことは
此の世に無いと思ひます」

『死んだら身体は誰のもの?』
湿う睛で君は渇いてる
「自分のものでは無くなるが
生きたひ誰かのものになる」

『ならばよ、ならばよ、
いま此処で僕が死ぬとするよ
そしたら僕は勇者かい』

黴が生えて居る君の腕
壊死した侭の肢の指
睡ると死んぢやう僕の夢
屹度帰るね此の家に

「救へる命は在りますか」
僕が問ふのは御門違ひだ
だつてだつて
君は確かに僕の前で言葉を放つて
下品に笑つて見せたのに
もう、此処には居ない

「云つて欲しかつたよ」
嘘だ!本当は識つて居た
皮膚が覆ひ隠す其の傷

笑ふ度に思ふこと
苦しき夕べと朝御飯
怖くて哭ひたら片付いた
明日も生きてく如何にして

きちんと消へてく君を視て
變はらず遺つた僕が居て
未だ在る躯に触つたよ
「君が正しさ」

黴が生えて居る君の腕
壊死した侭の肢の指
睡ると死んぢやう僕の夢
屹度帰るね此の家に

「此処には何にも無くて良い。
さういう思考が在れば良い。』
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