尾道の女

北国の 町からきたよ
潮風に ふかれて来たよ
あゝ 尾道
あの娘がここに いるという
噂の町の ともしびが
泣けとばかりに まぶたにしみる

しあわせが 待っててくれる
そんな気が したんだ俺は
あゝ 尾道
さびれてのこる 色街(はなまち)の
のみ屋の椅子に こしかけりゃ
じんとひゞくぜ 霧笛の音が

逢えないと わかっていても
いちどだけ きてみたかった
あゝ 尾道
ひと月前にゃ いたという
二階の窓で いさり火を
ひとり眺めて あの娘をしのぶ
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