まつむしそう

うすむらさきの 花をたずねて
はるばると来た 霧ヶ峰
まつむしそう 思い出に咲く
母と来た路 今も変わらず

行けどもつきぬ 花に酔いしれ
登りつめても 尚はるか
まつむしそう 咲き続く山
母と来た路 ただなつかしく

幸福(しあわせ)だった 花にうもれて
母を背負いし 信濃路の
まつむしそう すだく虫の音(ね)
母と来た路 風立ちぬ秋

山小屋の窓 淡きともしび
花のうつり香(が) 囲炉裏(いろり)ばた
まつむしそう 夕霧にぬれ
母と来た路 小夜(さよ)更(ふ)けてゆく
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