はくしの春

誰か 振り返ってくれないか
砂上へ
魔法はもう使い果たそうか
好きなだけ

あざやかな終わりを見据え欠く線を
まだ見えない未来を使って埋めていく
ぼくの頭上はもう飴玉で満ちていた
溶けて伸びちぎれて消える 消える

夕波が足元を攫って惑う
爪先から熱を奪う 砂を 風を 連れて

声を聴け 名前のない思考達を
晴らしてくれ 通り抜けるみたいに
数えないで 終わりを忘れさせてくれ
時よ止まれ 知覚するより早く

形のない朝夜を経て移ろった
空の座に何を宛がう 何を
声や姿はいま全て水溶性
削れ溶け流れて消える 消える

足跡が残らぬようかかと上げて
爪先に触れた砂を今も覚えている

導いて
行き場のない魂をも
息を止めて
残らず飲み干してよ

間違う日は長く続くことのないよう
祈りをくれ 凪いだ水面みたいに
悲しい日は 迷わぬよう手を繋いで
時よ止まれ 知覚するより早く

晴らしてくれ
時よ止まれ

誰か 振り返ってくれないか
砂上へ
魔法はもう使い果たそうか
好きなだけ
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