エスカレーター

毎朝 地下鉄で
あなたを待ってる
地上へ出るまでの
ほんの数分

長いエスカレーター
こっそり 割り込む
髪から香水が
ほのかに香る

「昨日は何をしてた?」
「ひとりでいたのかい?」
言葉にできないまま
話しかけている

夢では何度も
抱きしめていること
あなただけが知らない
すぐ近くにいるのに
腕さえのばせば
触れられるこの距離
ゆっくりのぼりつめてく
エスカレーター

毎日変わらない
ペースの連続
地上へ出るまでの
秘密の出逢い

長いエスカレーター
終りに近づき
あなたは小説に
しおりをはさむ

明日も同じように
見知らぬふたりは
名前も知らないまま
出口へ向かって

夢では何度も
抱きしめていること
あなただけが知らない
僕はここにいるのに
声さえかけずに
寄り添うだけの距離
ゆっくりふたりを運ぶ
エスカレーター

どれほどあなたを
思っているのかを
あなただけが知らない
すぐ近くにいるのに
腕さえのばせば
触れられるこの距離
ゆっくりのぼりつめてく
エスカレーター
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