かげろう

いつの間にか止まる 砂時計のように
時間(とき)はいつも過ぎ去ってから 人の過(あやま)ちを笑う

いつの間にか枯れる 花瓶のバラのように
気づいた時は なすすべもなく 愛は終わりを告げる

羽根をふるわせて はばたく かげろう
命も夢も記憶も捨てて 夜明けを待たず 燃えつきてゆく

愛しすぎるたびに あなたの後ろ姿
一歩、二歩と離れていった 短い影を残して

「君を誰にも渡したくない」と
微笑みかけた二人の夏が 音も立てずに錆(さ)びついてゆく

泣いてるわけじゃない 瞳閉じていれば
二人が生きた世界が全て 消えてくれる気がするの

降りしきる雨に じゃまされようとも
もう一度だけ はばたいてみる 私は愛に生きる かげろう
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