教えない

「僕のどこが君は好きなの?」と訊いて
答えはどうでもいい眼をしていた

靴の紐を結ぶ時の
すこし屈めてる後ろ姿
ビデオテープ見てるうちに
寝息たてていた夜の寝顔

もうここにはあなたのまなざしも
ほほえみもない 面影があるだけ

バスタオルで髪をふきとる指先
着替えたシャツの香り
悪いジョーク 笑顔 いたずらな瞳
心を試すような囁き方

待ち合わせに遅れた日の
すぐに嘘だとわかる言い訳
骨の折れた傘をさして
かばうように抱き寄せた仕草

ねぇ あれから誰を好きになって
今頃どんな くちづけを交わすの

会えない日にくれた電話の短さ
寂しくさせる手口
ありふれてる名前 イニシャルの形
優しい声の響き その温もり

愛してると動く切ない唇
あなたを包むすべて
「僕のどこが君は好きなの?」と訊いて
答えはどうでもいい眼をしていた
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