哀愁の木曽路

木曽の山峡(やまあい) 日暮れは駆け足
風が板戸を カタカタゆする
泣きに来ました 女がひとり
切れぬ未練(おもい)を ひきずりながら
秋に追われる 赤とんぼ

軒の行灯(あんどん) ポツリと点れば
闇の深さに 心は細る
泣きに来ました 女がひとり
黄楊(つげ)の小櫛(おぐし)で 髪梳(す)く指に
からむ吐息が やるせない

萩のさみしさ 桔梗のはかなさ
咲いて短い 一秋(ひとあき)の花
泣きに来ました 女がひとり
飛び立つ鳥に 瞳をぬらす
木曽の七谷 霧がふる
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