クレーンと映画

急行電車と待ち合わせ
私はしばし足止めをくらって
空間に溶ける気だるさを
小さく吸って吐き出す

あのCMがどうだとか
そんな話でお姉ちゃんが笑った
意識は画面の奥底に沈んでいるよう
私の世界は平面だ

高く上がったクレーンから
ひとつの命が弾け飛んだ
唇を軽く噛んで
少ししょっぱいなって思ってた
夢見る男の子が祈ってる
明日も平和でありますように
そんな事より、そんな事よりさぁ
彼とゆっくり映画の話がしたいのさ

甘くないコーヒーしかめ面
湯気に吐息を絡ませあそぶ
私がいくら吸い込んだって
果てしなく続く曇天

1日に30回は手を洗う
お姉ちゃんは潔癖で生きづらい
向かいのお家のピアノが教える
私の世界は芸術だ

高く上がったクレーンから
ひとつの命が弾け飛んだ
黒ずんだ爪を噛んで
黒ずんだ誰かを見てた
夢見る男の子が言った
「あんたみたいな大人にはならない」と
そんな事より、そんな事よりさぁ!
彼とゆっくり映画の話がしたいのさ
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