歌舞伎町の女王

蝉の声を聞く度に 目に浮かぶ九十九里浜
皺々の祖母の手を離れ 独りで訪れた歓楽街

ママは此処の女王様 生き写しの様なあたし
誰しもが手を伸べて 子供ながらに魅せられた歓楽街

十五に成ったあたしを 置いて女王は消えた
毎週金曜日に来ていた男と暮らすのだろう

誰に誘われるでもなく
辿り着いたのこの町
育ってないのに懐かしいの
記憶よりも胸焦がすコロニー

覚えているのは香水のかおり
残り香を吸って育った過去に
サヨナラを言えずに彷徨うひとり
真っ赤な口紅 ぎこちなく
見えてた唇 非行に走る
望んでなんかない顔はママの痕
所詮あたしも快楽主義
改札過ぎたら待っていた この街が

“一度栄えし者でも必ずや衰えゆく”
その意味を知る時を迎え足を踏み入れたは歓楽街

消えて行った女を憎めど夏は今
女王と云う肩書きを誇らしげに掲げる

ネオンと街灯 朧気な光
あたし以外大人しか居ない
切っても切れぬ血を辿って来たり
生臭い雄と雌のかほりが
今日もこの街を動かす
明日も知らなかった少女も今
女王と成り いとをかし
求められる悦びも
吸い尽くす浮世の愛しい汚れよ

女に成ったあたしが売るのは自分だけで
同情を欲した時に全てを失うだろう

JR新宿駅の東口を出たら
其処はあたしの庭 大遊技場歌舞伎町

今夜からはこの街で娘のあたしが女王
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