椿坂

お独りですかと 宿のひと
秋も深まる 奥山路
いいのよ このまま 来なくとも
想い出ほろほろ あゝ踏む道に
花も哀しい 椿坂

ひとひらふたひら 花びらを
なぜに散らして 降るしぐれ
着崩れ浴衣を なおす間も
惜しんで抱かれた あゝ恋姿
宿の灯りが 知るばかり

うつろに徳利を ころがして
こぼす吐息も 風の音
いいのよ このまま 来なくとも
この夜超えたら あゝ他人でも
あなたひとすじ 椿坂
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