野アザミの咲く頃

古い手紙を 握りしめ
運河(かわ)の流れる この街へ
野アザミの 咲く頃が
一番好きと 言ってたおまえ
目立たぬ花が紫に
ほのかに染まる うぶな恋だった

便り途絶えて 季節(とき)が過ぎ
俺のことなど 忘れたか
野アザミを 見るたびに
心に棘(とげ)が 刺さっていたよ
かもめの声に振り向けば
そぼ降る雨に 濡れて船が出る

北へ線路を 追い駆けて
たどる面影 無人駅
野アザミは はかなくて
秋風立てば 飛ばされ消える
か細い肩を抱きしめて
おまえの涙 胸に咲かせたい
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