酒の坂

灯りこぼれる この坂を
誰が名づけた 酒の坂
ぐい呑みひとつに 人生模様
浮かべて今夜も 酔いながら
上りもあれば 下りもあると
坂の途中の 男酒

髪のほつれ毛 指に巻き
わけがありそに 待つ女
野暮だとわかって おちょこを勧め
いい人来るまで つなぎだと
馴染みの客が おどけてみせる
坂の途中の 情け酒

店の親父は その昔
喧嘩三昧 暴れ者
忘れたことだと 静かに笑い
遠くを見つめて 目を伏せる
上りもあれば 下りもあると
坂の途中の 無言酒
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