港の走り傘

いつも港は 出船の匂い
昔ここにも いたと云う
海に縁ある 人だもの
そこはもう賭け 最後の賭けと
あなた名前の 灯をともし
帰り船待つ 浜酒場

手もち無沙汰に 海鳴り聴いて
箸の袋で 鶴を折る
何があったか 雨の夜
訳を教えて 別れの訳を
二人へだてる 海峡を
いっそ翔んでよ 紙の鶴

二人だけしか 知らない歌が
妙に流れる 昨日今日
もしやあなたの 合図やら
きっとそうよと 翔び出す先に
うしろ姿の 人の影
濡れて駆け寄る 走り傘
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