城あとの乙女

小高い丘の上 名もなき城あとが
訪れる人もなく ひっそりと眠っているよ

わずかに残る壁 苔むした石段
千年の時を超え 在りし日の夢を語る

あの日高い窓で 娘は待っていた
遠くからもうすぐ帰る愛しい人を

空には鳥が鳴き 小川はきらめき
もう二度と会えないこと まだ何も知らなかった

残酷な出来事が すべてを奪い去り
偶然に娘だけが ただひとり生き残った

ひばり ひばり 空を 自由に飛べるなら
ひばりになって 彼のところへ 飛んでいきたい

窓から大きく からだをのりだして
降り出した雪の中 まっすぐに 娘は飛んだ

ひばり ひばり 空を 自由に飛べるなら
ひばりになって わたしも空を 飛びたかったよ

小高い丘の上 もの言わぬ城あと
山あいに日は落ちて 風の草むら 虫の声

今でも ここにいる 月明かりに浮かび出る
千年の時を超え たたずむ乙女の姿

千年の時を超え 愛しい人を待っている
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