霧の宿

川の狭霧が 深くなる
つらい別れも 近くなる
見てはいけない おんなの夢は
伊豆の湯舟の 上り湯で
洗いながした 筈なのに
人目を避ければ 避けるほど
恋が身を灼く 離れ宿
湯の香移り香 静寂の中で
肩に残した 歯のあとを
指でおさえて 瞼ですがる
雨戸締めても すき間から
来てはいけない 朝が来る
駅へ行かずに いつものように
町のはずれの 踏切りで
影を追います いつまでも
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