海峡の宿

沖のいさり火 指さして
はしゃぐおまえの よこがおに
これが最後の 最後の旅と決めてきた
おとこ心が また揺(ゆ)らぐ
あゝ湯もや・湯の川 海峡の宿

ひとつ湯船に 躯(み)を浸(ひた)し
胸でごめんと つぶやけば
どうかしたのと 濡れた後(おく)れ毛(げ)かきあげて
みせる笑くぼの 愛しさよ
あゝ湯の香・湯の川 海峡の宿

俺の右腕 手枕に
ねむるおまえを 抱きよせりゃ
明日の別れを 罪の深さを責めるよに
風が夜通し 泣きじゃくる
あゝ霧笛・湯の川 海峡の宿
×