浅草メロドラマ

とめる母の手 振り切って
彼の下駄ばきアパートへ
泣いてころがり込んだのは
ほおずき市の夜だった
風も通らぬ四畳半 恐いもの無かったよ
今に想えば十八歳(じゅうはち)の
あれは浅草メロドラマ

着のみ着のまま 貧しさに
笑うことさえ 忘れはて
ふたり死のうとしたけれど
ひとり私は残された
暗くよどんだ隅田川 涙さえ出なかった
めぐりあわせかあの晩も ほおずき市が近かった

そして季節は 又めぐり
ほおずき市の浅草で
つくり笑顔に口紅をさし
今日も私は生きている
帰りたいけど両親はふるさとの石の下
イヤだごめんネ ついぐちに外は祭りの人の波
イヤだごめんネ ついぐちに外は祭りの人の波
×