九重山逍遥歌

たおやかに 九重の裾に 広がりし
緑果てしなき 草原は
青春の日の 希望(ゆめ)の輝き
カッコウの 声静まりしころ 聞こえるは
その名もゆかし あ、 すがもりの鐘

夏近き 九重の峰は 赤々と
ミヤマキリシマの 咲き競い
星空の夜(よ)は キャンプファイヤー
かの人の 火影(ほかげ)に揺れし 横顔を
そっと偲ぶは あ、 坊がつるかな

幾重にも 染まる九重の 紅葉を
ステンドグラスの 彩と
文に綴った ヒロイン在りし
山上(さんじょう)の 青い水面に 影映す
君は妖精(ニンフ)か あ、 御池(みいけ)の岸よ

人影の 消えた九重の 高原に
きらめく霧氷の 冬木立
静寂(しじま)破るは 風の口笛
人の世の 移ろい知るや 悠久の
煙りなびかせ あ、 九重の山よ
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