息子へ。

弥生の風に舞う淡雪は どこか我が子(おまえ)の笑顔に似てる
ふわりふわふわ 落ちてはとけて 春の遠さをものがたる
耳をふさいでみりゃ春疾風(はやて) どこかお前の泣き声のよう
ひゅるりひゅうひゅう 岬を巻いて 「待ってておくれ」独り言
あああ 便りがないのは元気な証拠 ユメを肴に酔う番屋
ここはウミネコ騒ぐふるさと おまえを待ち侘びているふるさと
父ちゃんの顔……憶えているかい?

もうじき七つか新入学か カバンひとつも買ってやれない
ぽつりぽつぽつ 頬を濡らして 「迎えにゆくから」かすれ声
あああ 便りがないのは幸せだから? ため息まじりのナミダ酒
ここはツバキの花咲くふるさと おまえをやさしく包むふるさと
父ちゃんの声……忘れてないかい?

あああ 便りがないのは元気な証拠 ユメを肴に酔う番屋
ここはウミネコ騒ぐふるさと おまえを待ち侘びているふるさと
父ちゃんの顔……憶えてるだろか?
父ちゃんの声……忘れただろな…
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