神戸在住

氷。
揺れるウヰスキーグラス。
GRANDFRONT OSAKAのバーの夜は更ける。
貴方に接吻して言う。

「今夜は私、終電で帰るわ。」

神戸駅へ向かう列車。

通り雨が濡らした街はネオンや信号を乱反射して、
きらきら、煌めいている。
まるで宇宙にいるみたいだ。

君の存在は私にとって何だったっけ?
って、私、毎晩毎晩自問自答している。
いつも蘇るのはMOSAICの観覧車で為た、私にとって初めての接吻だ。

遠くで流れ星が瞬いては消えていく。
いつだって流れ星に願うのはただ、ひとつだけ。

これが、恋なのですね。

がたん、ごとん。がたん、ごとん。
神戸駅へ向かう列車。

瀬戸内海が見えてきました。背広達はあの豪華客船に背を向けて立つ。
私は街を見ていた。
街もまた、私を見ていた。

特に名前の無い振動にゆらゆら揺られて、
君との記憶と眠りに落ちていこう。
神戸南京町の中華街と。ポートアイランドの潮騒と。
エル・エ・ルイウーベンと。

大震災と。

神戸、在住。

遠くで流れ星が瞬いては消えていく。
いつだって流れ星に願うのはただ、ひとつだけ。

「僕達は流れ星だ。瞬いては消えていく。」

いつだって流れ星に願うのはただ、ひとつだけ。
君の、聲なんですね。

何気無い日々の風景が「神戸在住」。
夢の中で、私は、G線上のアリアが響く夜を目指して、
君にもう一度、さよならを言う。

神戸南京町の中華街と。ポートアイランドの潮騒と。
エル・エ・ルイウーベンと。
大震災と。栄町と。東遊園地と。千燈祭と。
フィンセント・ファン・ゴッホ展と。
横山光輝と。みなとこうべ花火大会と。異人館通りと。
菊花賞と。ルミナリエと。

……。
……。
……。

三宮駅で急停車。
人間を、撥ねた、みたいだ。
それと判る振動で汗塗れで目覚める。

今の衝撃ならば即死だろう。
一月一六日中には帰れない、な。
車内。
満ちる舌打ちとほんの少しの

憧憬。
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