うしろ姿

「三月……
春とは云っても、まだ肌寒い日だった」

雨の中で
さよならだけの別れだったが
何故か気になる
何故か気になる うしろ姿

傘もさゝず
背中をつたうしずくのせいか
肩がふるえる
肩がふるえる うしろ姿

「駄目だよ、うしろを向いちゃ……
これでいゝんだ
迷わずに、
歩いて行っておくれ……」

涙なんか
見せるあいつじゃなかったけれど
やけに淋しい
やけに淋しい うしろ姿

雨の日には
いつになっても思い出すだろ
細いうなじの
細いうなじの うしろ姿
×