やどかりの歌

背の荷物も おろさぬうちに
またも旅かよ やどかりは
小石だらけの さみしい磯を
情ケ島とか 言うけれど

岩の割れ目を 一夜の宿に
住めば うつぼが じゃまをする
どこへ逃げても 苦労とやらの
重い甲羅が ついてくる

泣くなやどかり つらいだろうが
しょせん この世は 仮の宿
ころり ころりと ころがるたびに
角もとれます まるくなる

波を枕の 船頭さんも
いわば この世の やどかりさ
百里 二百里 間切ってみても
狭い海から 抜けられぬ
狭い海から 抜けられぬ
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