高原旅愁

失くした恋の なつかしく
ひとり訪ねた 高原を
想いあふれて 中空(なかぞら)に
君の名呼べど 答えなく
ああ 白樺に
さやさやさやと 風が吹く

くちづけ一つ 想い出に
遠く別れて 幾年(いくとせ)か
掴(つか)み切れずに この手から
こぼれた夢の かけらやら
ああ 竜胆(りんどう)に
はらはらはらと 露が散る

立ち去り難く たたずめば
迫るたそがれ 高原は
いまも面影 捨て切れぬ
女の胸の 忍び音(ね)か
ああ 山鳩が
ほろほろほろと 枝で啼く
×