釣り糸

髭の爺さんと 釣り糸を池に垂らしていた
苦いくわえ煙草が 目にしみて
苛立つ涙を拭って空を見上げれば
ぼくは 僕はどうでも良かったんだ

爺さんは黙って 釣り竿を握り締めていた
枯葉は風に踊らされている
僕は一寸 くしゃみをして 襟を立てた
その日は 町で祭りさ

爺さんは向こう岸へ 歩いていったよ
背丈もある籠しょって
あたりは不気味に 暗さを増して あやしい雲行きさ
きっと雨が振り出すだけさ 僕はどうでも良かったんだ

紅い空が燃え尽きて まどろむ池の辺 独りうっとり
煙る雨に濡れて 夢見てたら なっちまった 魚の姿に
なっていたんだ 釣り糸ゆびにからませ
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