顧みて

タバコ屋の赤い公衆電話から
三日に一度のふるさと電話
10円玉を右手一杯乗せて
左手でダイヤル回した

手紙の返事を出せない言い訳を
後ろめたさが早口にする
君は頷く「ウンウン」と何か
言い掛けて通話が途絶えた

夢さえなければ すぐに帰りたかった
夢さえなければ 君のそばにいたかった

寝台列車を降り立ったあれから
幾十年かの時が過ぎ去り
都会に憧れ僕が得たものは一体
顧みて何だったのか

虚しいばかりの諦めの気持ちと
少しばかりの要領良さと
君を失くした後悔とそれを
埋め尽くせない哀しみと

夢しかなかった 心支えるものは
夢しかなかった 君に誇れるものは

夢さえなければ すぐに帰りたかった
夢さえなければ 君のそばにいたかった
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