かげろう

自動ドアの向こう側
一気に冷えてく体
エスカレーターすれ違った
それぞれの生活にまた
うっかり憧れそうになる
手を挙げれば教えてもらえた頃
分からないことが何なのかも分からなかったんだ
纏わりつく疑問に 昼下がり眠くなる
窓隔ててセミの声 誰かの椅子を引く音
騒がしいホームで思い出す
性懲りもなくうたうセンチメンタル
目の当たりにした美しいものに
引き留められて居たいもう少し

乾かない暑さに揺れる坂の上
追いかけて

裸足で踏む土がひんやり
思い出の端っこを引っかき
頬に当たる風のぬるさに
もう平気です、と しらばっくれたくなる
すげーたくさんの人やモノ
否応なし飛び込んでくる世界
チャリで下る坂道で
すべて呑み込みたくなった
「結局誰にも分かんない」って
確かにそうだけど
口にすればするほどに
本当に意味のない言葉だと思わない?
何度も同じところなぞるから
濃くなって
正しいような気がして
何度も同じところなぞるから
ついに破れてしまうの

乾かない暑さに揺れる坂の上
追いかけて
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