びいどろ草紙

異人屋敷に秋が来る
ひとつおぼえのメリケン節を
くり返す くり返す あゝくり返す
酔いざめ心地で一枚めくった
びいどろ草紙に あたいが見える
凍った心に 身体ひとつが
身体ひとつが もえて行く

異人屋敷に風が吹く
波止場真近の黒船あかり
ゆらゆらと ゆらゆらと
あゝゆらゆらと
らんたんともして一枚めくった
びいどろ草紙にあたいが見える
ギヤマン模様の 赤いお酒に
赤いお酒に 酔いしれて

異人屋敷に彼岸花
地獄のぞいた女の小唄
唄おうか 唄おうか あゝ唄おうか
読めさえしないが一枚めくった
びいどろ草紙にあたいが見える
行く宛なくした 女一人が
女一人が 胸ひらく
行く宛なくした 女一人が
女一人が 胸ひらく
×