錦川物語

赤い小さな 下げ鞄
長い黒髪 三つ編みの
昔を知るひと いまはなく
幼ななじみの 錦帯橋(きんたいきょう)を
風と渡れば 山かげに
おもかげ色の 灯(あかり)がうるむ

桜並木の ぼんぼりも
白い河原の 石ころも
いまもし言葉を 話せたら
噂するでしょ 小さな恋の
花が蕾で 散った日の
五つの橋の 物語り

燃えるかがり火 赫々(あかあか)と
水の面(おもて)に 散る火の粉
想い出ゆさぶる 鵜飼船
あれはいくつの 夏だったやら
遠く儚ない 人の世の
さだめを映す 錦川
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