12号室

彼女は美しかった 真っ白な顔をしてた
きれいな髪をしてた 声もやわらかだった
彼女の室はいつも 花の香りがした
いい香りがした ものすごくあったかだった
彼女は人もうらやむほどの ほとんどをそこでは持ってた

そこに入る訳は 8つの俺でも解っていた
今より良くなるために 必要だと解っていた
そこは動物園だった みんな変な形をしてた
仲間ですよと紹介された こんがらがって涙が出てきた
こんな変なやつらの 仲間でも友達でもないと

一週間話せなかった 誰でも話せなかった
全部嫌いになった ご飯も嫌いになった
その日もベッドの中で じっと息を殺していると
誰かが蒲団の中に 手紙をつっ込んでいった
よかったら12号室の 私の所に遊びにおいでと

彼女は微笑んでいた ベッドに体を起し
ものすごいきれいだった 泣きたいくらいきれいだった
ほんの少し話をした 本当はもっと話したかったけど
恥ずかしくてどうしようもなくて そこに来て初めて表にかけだした
表に出て彼女の前で 走ったことをすぐに悔やんだ

彼女と話したその日から ほんの少しづつだけど
誰かの問いに答えたり 誰かに話しかけれるようになった
何人かの友達もできて やっとそこの暮らしに
やっとそこの暮らしに慣れてきた 3ヶ月目の朝突然言われた
ここにいても君の場合はなんにもならない 君も家に帰りたいだろう

みんなとは違うと言われ ここに入ってきて
そしてやっとやっとここに慣れたのに ここも違うらしい
4時間電車に乗って 元いた教室に戻った
なつかしいはずのクラスの顔、顔 みんなよその国の人に見えた
今日からまた仲間ですと 先生は俺を紹介した

彼女は美しかった 彼女は美しかった
きれいな髪をしてた 声もやわらかだった
彼女の室はいつも 花の香りがした
いい香りがした ものすごくあたたかだった
彼女は全てを持ってた 白く長いはずの二本足を除けば
彼女は美しかった 彼女は美しかった…
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