追憶の鏡

暮れてゆく陽の長さだけが 過ぎた時間を知る
温もりをなくした掌 もう何も知らなくていい
重く影を曳いた市電を追いかけて
誰かを探す
風を抱いた髪は この手をすりぬける
何も残らないの

追憶の袷鏡 同じ景色重なる
季節だけ春へと走る 私を追い越して

満たされた日の想い出さえ やがて薄れてゆく
なじめない一人の部屋には 無くしたものが溢れ出す
光あせた街に 見つけるものなくて
立ちつくしたまま
二人で来た店は いつのまにか消えて
見知らぬ人ばかり

流れ星見てたころは愛されてた あなたに
もう一度 夢でもいいの その声を聞かせて

追憶の袷鏡 同じ景色重なる
季節だけ春へと走る 私を追い越して
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