遠い祖国

生まれた街の話をしよう
そこは遠い北の街
戦争の中で生まれてそして
幼い日に追われた街
ゆれる木の音 風に咲く花
短い夏の陽ざし
知らないはずの風のにおいを
覚えているのは何故

燃えたつ色の街の灯に
ジプシーの歌が聞こえた
石だたみの道をゆきかう馬車
とびかう物売りの声
自由の風に 胸を躍らせ
この街を愛した人々
戦争の嵐に もてあそばれて
運命にひきさかれた街

この街に別れをつげた日は
やけつく夏の終り
貨物列車の旅の終りに
たどりついた街はもう秋
公園の片すみ むしろがこいに
身を寄せ合って眠った
その夜暗い空から降った
白い白い粉雪

秋のはじめに 雪降る街 それが私の故郷
長い冬の訪れを 吹雪で飾る北国
たとえそこが 祖国とよべない
見知らぬ人々の街でも
私の街を呼ぶことを 許してくれますか
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