追憶のシアター

逢うひとのいない夜は
涙の証拠 隠して
古い切符を頼りに
ひとり劇場へ行こう

赤い壁のらくがきは
若い誰かの泣き言
壊れた椅子の軌みは
まるではかない ためいき

はじめの Showは
影をなくしたパントマイム
男たちの慰めに
夢に遊んだ
少年になって踊る

彼氏の目を盗んだら
暗がりで覗く鏡
擦り減った口紅で
Kissの回数など数えて

テーブルの上は淑女
テーブルの下は娼婦
さみしさが怖いから
愛も Dressも欲しがる

二回目の Showは
魔法 忘れたマジシャン
女たちの慰めに
嘘と薔薇とを
変えてやるしかできない

好きだった歌はもう
唇をはなれてゆく
あのひとの消息も
きっと知ることはない

最後の Showは
想い出のようなコメディ
笑いかけるヒロインに
似てる誰かを
心は思いだせない

このつぎのShowは……LA LA LA
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