あぶく

おはようって君にもう言えない
おはようって僕はもう言わない

今にもひっくり返りそうな舟
二人で漕いでゆくの
前の街より少し騒々しいけど
いい所 ちょっと散歩してみよう
いつもと違う道へ

水面に浮かぶ泡
指で潰す 心の声に合わせて
君を支えるもの
そこには僕はいない

もうすぐ舟が沈むから
早く向こう岸へ漕ぎ進めなきゃ
僕だけ水を掻いても
舟はただそこで回り続けるだけ

濡れた体震わせて
オールから手を離して言ったの
「朝が私たちを導くまで 共に待とう」
でも 僕は舟から降りてしまった
心が泡に潰されるのが恐かった

これでさようなら

今にもひっくり返りそうな舟
二人で漕いでいたの
この街はいつも騒々しいけど
思い出すの
ちょっと 散歩してみよう
いつもと違う
あの日歩いた道へ
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