路地裏の猫

朝刊のようにあなたは現われてはじまりという言葉かがやく
やさしいね陽のむらさきに透けて咲く去年の秋を知らぬコスモス
「おやすみ」をあなたに言ってもう今日は鳴らなくていい電話と思う
明日会う約束をしてこんなにも静かに落ちる眠りのみどり
駅までのいつもの道のまがり角そよりとポストに近づく一人
今我を待たせてしまっている君の胸の痛みを思って待とう
隅田川に冬のはじめの風吹いて緊張している土手の草々
白猫と目が合っている路地の裏 時の割れ目と思う下町
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