夜更けの酒

夜更けにひとり 酒を酌(く)む
哀しいくせは 誰のため
忘れる筈の 酒なのに
恋しさだけが なぜつのる

酔えない胸に 浮かぶのは
倖せだった ことばかり
左の指に きざまれた
指輪のあとが またうずく

泣かされながら 耐えながら
歩いた道の 懐しさ
今では泣かす 人もなく
グラスの数が ついふえる

夜明けが近い 盛り場の
ネオンが消える ひとつずつ
消えても残る 想い出に
空(むな)しい酒は いつ果てる
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