国後の女

海鳴りさえも 凍(しば)れて絶えて
噂をとざす 北の島
あゝ国後の 国後の女 チャチャ岳の
麓(ふもと)に眠る 面影を
しのぶ岬に 雪が舞う

産声あげた ふるさとだから
私はここで 死にたいの
あゝ国後の 国後の女 あの夜は
素足のままで 流氷を
越せばよかった 二人して

地図からいまは 消されたような
島にもきっと 春がくる
あゝ国後の 国後の女 その朝は
墓標に積る 雪のけて
逢いたかったと 抱いてやろ
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