夕焼け雲

夕焼け雲に 誘(さそ)われて
別れの橋を越えてきた 帰らない
花が咲くまで帰らない 帰らない
誓(ちか)いのあとの せつなさが
杏(あんず)の幹(みき)に 残る町

二人の家の 白壁が
ならんで浮かぶ堀の水 忘れない
どこへ行っても忘れない 忘れない
小指でとかす 黒髪の
かおりに甘く 揺れた町

あれから春が また秋が
流れていまは遠い町 帰れない
帰りたいけど帰れない 帰れない
夕焼け雲の その下で
ひとりの酒に 偲(しの)ぶ町
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