ひとり徒波

風の音が心をゆする
窓際にひとりたたずむ
あの夏が匂う砂浜は
足跡を淋しく残す

もう もう 振り向かないわ
指輪はずし ひとり徒波(あだなみ)

愛はまぼろし
追うほど逃げる
海のかなたに見える蜃気楼のよう
愛はまぼろし
追うほど逃げる

ゆれる私 ゆれる面影すべて
波がさらう

古びた時計が流されて
行くあても波は知らない
重たく広がる空にさえ
海鳴りは はじけて響く

もう もう 臆病じゃない
窓の鍵を かけ直して

愛はまぼろし
追うほど逃げる
つかんだ指からこぼれ落ちる砂のよう
愛はまぼろし
追うほど逃げる

ゆれる私 ゆれる面影すべて
波がさらう
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