くちなし有情

恋と呼ぶには まだ幼くて
友と呼ぶには 辛かった
あゝくちなしの 花咲く町よふる里よ
おさげの髪の おもかげを
さがしに帰る 旅ごころ

好きと ひと言 言いだせなくて
別れ涙を ふいた駅
あゝくちなしの 花びらうるむ ふる里よ
嫁いで母に なったとか
噂がしみる 風だまり

遠い初恋 月日の流れ
変わらないのは 花ばかり
あゝくちなしの 白さが匂う ふる里よ
逢う日につづく 道はなく
都の雨に 濡れてゆく
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