CINEMA

誰もいない映画館で今静かに始まる
君が主役の恋愛映画 相手役は知らない誰か
僕はただの通行人役
幸せそうな君の目に映ることもないまま
静かに出番を終える

君にとって僕はただのエキストラ
そんなことは分かっていた
なにを確かめに来たんだろう

ねぇほら映画はもう終わったよ
スタッフロールの中 僕は立ち上がれないまま
続きがあると信じ待ち続ける
お願い一度だけ僕を見てよ
笑ってみせてよなんて我儘は言わないから
その目に その記憶にほんの少し せめて一度だけ

君の名前 そのあとに続く名前は 僕でありたかった
軽やかな恋愛描写
観たくなかったような 観たかったような
売店で買ったポップコーンはひとかけらも減ってないや
神様が書いた台本なら残酷だな

運命に引き裂かれたわけじゃなく
出会うことすらなかった
ハッピーエンドこそ悲劇だ

ねぇ初めて会った日のことも
少しだけど交わした言葉も描かれないまま終わった
なんて泣ける映画だろう
ウソだよ 映画はもう終わったの?
客席には明かりが灯るけど立ち上がれずに
後編が始まるの待っていた
そんなはずないのに

ふざけたフリして君をさらったら
NGな僕は全部消えてしまうかな

いったいどれだけ遡れば
変えることが出来たのだろう
考えても無駄だとわかってはいるけど悔しいんだよ
お願い一度だけ僕を見てよ
笑ってみせてよなんて我儘は言わないから
その目に そのフィルムにほんの少し 焼き付けて
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