ライカM4

モデルはどんなつもりに写ろうかと
あれこれ考えてやって来た それなりに
モデルはどんなつもりに写ったかと
期待を籠(こ)めて出来上がりを覗(のぞ)き込む
ところがそこに姿はない
期待を籠(こ)めた姿はない
モデルは黙り込んで 踵(きびす)を返す
だってそれはライカM4 無理もなくてライカM4
こいつが撮るのは風と光 他(ほか)にはあとひとつだけ
だってそれはライカM4 無理もなくてライカM4
こいつが撮るのはレンズの手前 カメラマンの涙だけ

モデルは何(なん)の色に染まろうかと
腕の見せどころを考えてやって来た
モデルは新たな色を創り出せたか
意地の見せどころを探して覗(のぞ)き込む
ところがそこに貌(かたち)はない
モデルは透明に写るだけ
靴音荒げ モデルは立ち去った
だってそれはライカM4 無理もなくてライカM4
こいつが撮るのは風と光 他(ほか)にはあとひとつだけ
だってそれはライカM4 無理もなくてライカM4
こいつが撮るのはレンズの手前 カメラマンの涙だけ

時がすぐに過ぎるのは 良(い)いことかもしれないね
つなぎとめることは出来たかい 今日吹いた風を

モデルは逃げて指示に従わない
機嫌悪いらしく 話に応えない
モデルはよけてフレームに収まらない
〆切りの時間ばかりがただ過ぎてゆく
あれはどこかで見た奴だと
気がつけば忘れようもなく
子供の頃の自分がそこにいた
だってそれはライカM4 無理もなくてライカM4
こいつが撮るのは風と光 他(ほか)にはあとひとつだけ
だってそれはライカM4 無理もなくてライカM4
こいつが撮るのはレンズの手前 カメラマンの涙だけ
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