おらんだ花嫁

歓楽街の裏通りの店で恥ずかしながらおまえを見初めた
朽ちかけていた小さな商札には「まちこ8万円」とマジックで書かれていた
かつてこのように甘い衝撃を受けた事があっただろうか
ショウウインドウに両手を張りつけいつまでもおまえを眺めていた

おらんだ花嫁 連れていっておくれモーターの廻る
チューリップが開いているその丘で
おらんだ花嫁 一緒にいっておくれ風車の廻る
チューリップが咲いているあの丘に

応接室へ吉日に招き上座のおざぶにおまえを座らせた
ああ、いや、ええと、何か訊ねなければ
「あの、お休みの日は何をなさってますか?」
仕事が終わればそそくさと帰ろう二人で築こう愛の巣を
死んだ女房の割烹着を着させて今宵、おまえを眠らせはしない

おらんだ花嫁 連れていっておくれモーターの廻る
チューリップが開いているその丘で
おらんだ花嫁 一緒にいっておくれ風車の廻る
チューリップが咲いているあの丘に

ある晩酔ってただ我を忘れてもう無茶苦茶におまえを抱いた
仕事の上の些細なトラブルが私を一人の恥知らずな中年にしてしまった
煙草の灰がなめらかなおまえの真白な首筋に落ちて
愛しいおまえは空気が抜けてみるみるうちに萎んでしまった

おらんだ花嫁 連れていっておくれモーターの廻る
チューリップが開いているその丘で
おらんだ花嫁 一緒にいっておくれ風車の廻る
チューリップが咲いているあの丘に
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