ビー玉望遠鏡

まどろみの午後 にわか雨が通りすぎてく
虹の向こう側で 夏が静かに動きだした

南風にほどかれてく
いくつかの青い記憶

ラムネ色した うたた寝の夢
揺れる陽炎 遠い蝉時雨
浴衣姿に心ざわめいて
夕方 渚で君の手を引いて

まぼろしの様に すべてが光に包まれて

熱を帯びたこの想いは
しばらくは冷めそうにない

プールの匂い 歪むアスファルト
汗ばんだシャツの中の下心
少し浮かれた夜にまぎれたら
帰りたくない 帰したくない

焼けた背中の痛みに気付かないままで
ビー玉の中 短い夏が過ぎてく

気まぐれな君は 逃げ水のようで
細いうなじに 我を忘れそう
浴衣姿に心奪われて
夕方 渚で君にくちづける

悲しい事なんか何も無いはずなのに
言葉少なに 何故か切なくなって
黄昏の中に 閉じ込められたように
ビー玉の中で夏は過ぎてく
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